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お休み、私の『子供』たち。
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レオニスとマルトゥス。
すぴで話すフラグを回収し忘れた結果←


「おい、レオニス」
「はい……? 何ですか、ボス?」

唐突に後ろから声をかけられて、レオニスは不思議そうな顔で後方を振り返った。
闇に溶けそうな姿が、空から降り立つ。
いつになくピリピリした空気を纏って。

「何だじゃねぇよ。テメェこそ何してやがる」
「……星を、見ていただけですが。
 何を怒っていらっしゃるんですか」

戸惑って尋ねれば、剣呑な視線が返って来た。

「テメェ、最近動き悪いんじゃねぇのか?
 そんなことでシンオウチャンピオンの1軍が
 勤まるとでも思っていやがるのか」
「まさか。そんなことはないですよ。
 私はいつも通りにしているつもりです」
「あ? いつも通り、だと?」

いつもの柔らかい笑顔で返したつもりが、どうやら余計機嫌を損ねたようで。

「ふざけてんじゃねぇぞこのバカ虎ぁ!!
 エアレズにも分かる異変をテメェで気付かねぇだと?
 オーナーがいねぇと自己管理もできねぇのか!?」
「……っ、私は、本当に何でも……」
「……ない、とは言わせねぇ。あの兎だろうが」

レオニスが言葉に詰まり、動きを止めた。
兎――レオニスの恋人のミミロップのことだ。
目の端が赤く染まるのを感じながら、マルトゥスの次の言葉を待つ。

「この間来た時にチラッと見たが。
 一見普通だったが……空気が泣いていたな。
 それが気になってるんじゃねぇのか?」

自分のような特殊な目を持っているわけでもないのに、
マルトゥスの観察眼は一級品だ。
叶わないな、と溜息をついた。

「ええ、……そりゃ、気にかかりますよ
 大事な人ですから」
「……どうして訊かない?」
「以前言ったでしょう。彼女に任せ……」

「おい、甘ったれ」

言葉を遮って、
目の前を。

マルトゥスの剣撃が掠めた。

「なっ……!?」

髪が数本、切れてはらりと落ちる。
さぁっと血の気が引いた気がした。

「ボス、突然何をっ……!」
「黙れクソガキ! どこまでナメ腐ってやがる、
 テメェがそんな受動的でこの先円滑円満で行くだと!?
 ウチにそんな女々しいのはいらねぇんだよ、
 寝言言うなら永久に眠っちまえ!」
「寝言など誰も言っていませんよ!
 言いたくない話ならこちらが急かしても仕方ない、
 彼女の心の準備が出来るのを待って何が悪いんですか!?」

マルトゥスの行動と暴言に流石に抑えが利かなくなり、
ほぼ同等の声量で怒鳴り返す。
その様に、マルトゥスはすぅっと目を細めた。

「……つまり、テメェがあの兎が原因で
 調子が出ねぇのは確実なわけだ」

ばさり、翼を広げる。
闇色の翼に、紅のシャツがはためいた。

「……何処へ行くつもりですか」
「決まってるだろ。兎狩りだ」
「……はっ!?」

予想だにしなかった言葉に目を見開く。
マルトゥスは顔色一つ変えず、冷たい目でこちらを見ている。

「残念だが俺が大事にするのは同胞と仲間くらいでな?
 他の軍の他の種族がどうなろうと知りゃしねぇ。
 テメェの躊躇でパール軍に被害が出たら困るんだよ。
 オーナーも今いねぇことだし、尚更だな」
「貴方という人は……見損ないましたよ……っ!」
「吠えてろ、仔虎。俺は本気だからな」

それくらい知っている。
冗談でこんなことを言う人物ではない。

「アディオス、レオニス。さっさと目ェ覚ませよ?」

漆黒の笑みを残して、抜き身の白刃を片手に鴉は翼を翻す。

「……っマルトゥス! 例え貴方でもそれはさせない!!」

雲のない星空に、
不自然な稲妻が走った。



「……何だ、俺相手でも攻撃できるんじゃねぇか。
 とんだ甘ちゃんだと思ってたが、多少見直してやるよ」
「……それは、どうも」

赤く染まった目、手に電撃を纏わせて、
稲妻に足を止めた「敵」を見据える。

「なぁ、レオニス。待つから訊かない、というのはどう言う事だと思う」
「? 何を、いきなり」
「それは本当に正しい選択だと思うか」
「……認識に差異があるから、貴方はそれを訊くのでしょう」

ふわりと今一度降り立ったマルトゥスに警戒を解き、
電撃を霧散させて向き直る。

「そうだ。訊かなければ意思の疎通などできない。
 まして、理解していない部分のある相手なら余計だ」

抜いたままだった剣を、鞘に納めながら静かに語る。

「それに……だ。こちらから一度も『それ』を話題に振らないのは、
 逆に自分に対し無関心だと思われる可能性もあるわけだ。
 その話をしてもいいのか、しても不快に思われないか。
 相手は色々考えるだろう」
「決して、無関心では……」
「それは口に出さなければ分からないことだ」

ばっさりと返されて、またしても詰まる。

「戦闘に集中できないほど気に掛けているなら、
 そして俺に牙を向けるほど本気であるなら……
 少しは互いが『そういう話』をしやすい空気を作るんだな。
 お前のためにも、相手のためにも」

そこまで言うと、マルトゥスは深く溜息をついた。

「ったく、何で俺がお前らの面倒見なきゃいけねぇんだ」
「……ボス……」
「興が削がれちまった。先に嬢ちゃんとこに帰ってるからな」

返事も待たず、踵を返し歩き出して。

「……レオニス。今日は脅しで済んだが、次はお前次第だからな」
「……肝に銘じておきます。やらせませんけれどね」

その返事に鼻で笑うと、マルトゥスは翼を広げて飛び去った。
しばらく、その姿を見つめて。
もう一度、彼が来る前のように星を見上げる。

「…………イセラ」

まだ距離は遠い。
どれだけ触れても、まだあの星のように遠い。
手を伸ばしても、遠すぎる。
けれど、伸ばすことで近づけるならば。
それは無駄ではないのだろう。

「独りには、させない……」

 いつか、この身この心、本当の意味で貴女の傍に。
 だから、私から少し尋ねてもいいだろうか。
 勿論、答えるのは貴女のペースで構わないから。

「……愛して、います」

主人の愛する、星の空に誓って。

さあ。
改めて、歩き出そうか。

****************

まさかの虎VS鴉。
更にまさかの殺人未遂。
すみません恋人様ごめんなさいorz

お相手方のネタブログに反応し損ねたのも含めてこんな話になったぜ!
ボスはお友達鴉さんばっかでイイヒトになってるけど
元々こういう酷な性格してるんだぜ……。
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