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お休み、私の『子供』たち。
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ヘライアの心境。

※受け取り方によっては不健全かもしれないです。


「ねぇねぇ、ママーン
 もしかして結婚するかもってホントー?」
「えっ、マジ!?
 お嫁さんとか超憧れるんだけど!!」

「あらあら……
 まだそんな話にはなってないわよ?
 遅いんだから、ヴィルヤもセーラももう寝なさいな」

子供を嗜めるように、何処から聞きつけて来たのか分からない情報で
盛り上がる2人を落ち着かせて。
それぞれが寝入ったのを確認して、ヘライアはそっと外に出た。


「……結婚、ですか……」


そう呟いたその顔は、明らかに曇り模様。
どう読んでも、喜びの色は欠片もない。

やがて唇が、自虐的な笑みを刻む。

「……いやだわ、できるわけがないでしょう……」

エイチ湖のほとりで、雪の舞う空を見上げてそうごちた。
腹部にそっと手を当てて、沈んだ表情で俯く。
結婚と聞けば、少なくとも女性なら温かい家庭を思い描くだろう。
自分と、愛する人と、それから―――

けれど。

どれだけ想って
どれだけ望んで
どれだけ焦がれて
どれだけ求めたとしても

この身は決して貴方の生命の欠片を宿してはくれない。
貴方の子の『母親』になることは、決して叶わない。

同じ種族に、とまでは言わない。
せめて近しい種に生まれていれば。
こんな苦しい思いなどしなくて済んだ。


それでも、私は後先も考えず異種族の貴方を愛してしまった。


「……ツェオン、さん……、ツェオン……さ……っ」

自分の身体を抱きしめるようにうずくまる。
とめどなく零れる涙が積もる雪を微かに溶かした。

優しい貴方。
子供など要らないと言うのかも知れない。
でも、貴方の子ならきっと利発で優しい子が生まれるでしょうに。
そう、男の子でも女の子でも、きっと愛らしい子なんでしょうに。
私と結ばれたら、そのどの可能性も見られはしない。
けれど私以外の方と、なんて考えただけでも耐えられない。

嗚呼、私は何て我侭な女なんだろう。

「最低、ですわね……私……」

涙を拭って、痛いほど冷えた空気を吸い込む。
言葉にならない想いを、旋律に代えて紡ぎ出す。

この声は届くのだろうか。
届いたとして、浅ましくは聞こえないだろうか。

それでも、その声は澄んでいて。

その夜、美しく哀しい嘆きの歌がキッサキの町に響いたという。


****************

ヘライアさんて普段から「ママン」て通称されてるだけに
「結婚したら子供を生み育てるのは当然の役目」的な先入観と
「自分は母親にならなければいけない」的な刷り込みが
ありそうだなと思ったらこんな重い話になった←
もしお相手から「貴女だけ居ればいい」みたいなことを真剣に諭されたら
多分号泣するんだと思う。
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